自社の強みを活かしたい

中小企業の経営者のためのマーケティングコラム

Marketing Step

2026/8/27 03:59

発信にAIを使う前に決めておくこと|誰が作っても同じ会社に見える5つの仕組み

前回は、発信量を増やすほど「結局、何の会社なのか分からない」状態になってしまうこと。そうならないために、自社は何者で、誰にどんな価値を提供し、何の会社として覚えてもらいたいのかというブランドの軸を先に決めておくこと。この2つについてお伝えしました。

では、軸を決めたあとに何が起きるか。

決めた軸は、決めた人の頭の中にしかありません。

社長は自社を語れます。けれどスタッフが書くと、少し違うことを言う。外部に頼めば、もっと違うものが上がってくる。AIに任せれば、どこかで見たような文章が返ってくる。

発信する人と場所が増えるほど、軸は薄まっていきます。

今回は、頭の中にある軸を、社内の誰でも、そしてAIでも使える形にしておく方法について書いてみます。結果として、少ない人数でも発信が回るようになります。

発信量は、もう増やせる。問題は中身のほうに移った

少し前まで、発信の悩みはほとんど「時間がない」「人がいない」でした。

コラムを書く。Instagramを更新する。ThreadsやFacebookで発信する。写真を撮る。リールを作る。YouTubeを撮影する。Googleビジネスプロフィールを更新する。数字も確認する。

これを全部やるのは無理だ、と。

ところが今は、AIを使えば一定の量は作れてしまいます。私たち自身も、実際に作る本数は明らかに増えました。

だからこそ、問題が移りました。

何も渡さずにAIへ依頼すれば、返ってくるのは一般論です。 業界のどの会社が出しても成立してしまう、当たり障りのない文章。それを量産すれば、発信量は増えているのに「何の会社か思い出せない」状態が加速します。

量が増えるほど、軸のない発信は薄まる。

必要なのは、頑張ってたくさん作ることでも、AIで量産することでもありません。自社の軸を、人にもAIにも渡せる形にしておくことだと考えています。

①頭の中にある軸を、外に出して文書にする

前回お伝えしたブランドの軸を、そのまま制作に使える形へ落とし込みます。

誰に届けるのか。何の会社として覚えてもらうのか。必ず伝えたい価値は何か。使う言葉。使わない表現。文章のトーン。ブランドカラー。フォント。写真や動画の方向性。ロゴの使い方。

いわゆる「トンマナ(トーン&マナー)」もここに含まれます。

目的は、制作を縛ることではありません。書く人が変わっても、答えが変わらないようにすることです。

社長が書いても、入社したばかりのスタッフが書いても、外部のデザイナーが作っても、AIに下書きをさせても、同じ基準へ戻ってこられる。この状態を先に作っておきます。

言い換えれば、これは「社長の頭の中を、社内の共有資産に変える」作業です。

②その基準を、AIに渡してから使う

そのうえで、AIを使います。

一つのコラムから、Instagramの構成を作る。Threads用に短くする。YouTubeの台本を作る。動画のタイトル案を出す。Googleビジネスプロフィール用に要約する。

こうした作業は、AIによってかなり効率化できます。

ただし、そのたびに「うちはこういう会社で」と説明し直していては続きません。説明を忘れた回だけ、一般論に戻ります。

そこで、①で決めた基準を、依頼のたびに渡すのではなく、手順の側に組み込んでおきます。

私たちの場合は、コラムからThreads用の投稿文を作る手順そのものをAIに覚えさせました。その手順の中に、誰に向けて書くのか、どんな言葉を使うのか、何の会社として覚えてもらいたいのかを書き込んであります。

以前は一本書くたびにゼロから考えていた作業が、今は記事を渡すだけで下書きが出てくる状態になっています。しかも、毎回同じ軸で出てきます。

AIにブランドを作ってもらうのではなく、自社のブランドを理解したAIに、制作を手伝ってもらう。

この順番を守れるかどうかが、AIを使いながら発信をブレさせないための分かれ目だと考えています。

③一つの軸を、六か所で繰り返す

次に、コンテンツの作り方です。

例えばこのコラムを一本書いたとします。ホームページに掲載して終わりにするのではなく、これを「元になるコンテンツ」と考えます。

そこから、要点を短くしてThreadsへ。図解してInstagramへ。話した方が伝わる部分を動画へ。短く編集してリールへ。詳しい説明ならYouTubeへ。Googleビジネスプロフィールにも関連する内容を掲載する。

一つの企画を、複数の接点へ展開していきます。私たちはこれをコンテンツの「マルチユース」と呼んでいます。

これは制作を効率化するための手法として語られがちですが、本当の狙いは別のところにあります。

同じことを、形を変えて、何度も見てもらうこと。

人は一度見ただけでは覚えません。媒体ごとに違う話をしていたら、なおさら残りません。伝える軸は一つに固定して、表現だけを媒体に合わせて変える。これを繰り返すから、少しずつ「あの会社はこういう会社だ」が積み上がっていきます。

私たち自身も、このコラムを起点にした展開を始めています。一本書いたら、要点を抜き出してThreadsの投稿を作る。図解にしてInstagramへ回す。今はこの順番を固定して回しています。

作る本数は増えているのに、考える時間はむしろ減りました。

④テンプレートを作り、書ける人を増やす

発信を続けるためには、毎回クリエイティブな仕事をしないことも重要です。

例えばInstagramなら、タイトル。本文。事例。まとめ。といった基本構成を決めておく。デザインも、Canvaなどで何種類かテンプレートを作っておく。

動画なら、冒頭のフック。問題提起。解説。まとめ。といった型を決めておく。

ゼロから作る仕事を、

「決められた型に当てはめる仕事」

へ変えていきます。

型があると、負担が減るだけではありません。文章を書き慣れていないスタッフでも、一定の質のものが出せるようになります。

発信が社長や一部の担当者に集中している会社は多いと思います。その状態だと、その人が忙しくなった瞬間に発信が止まります。逆に、型と基準がそろっていれば、現場のスタッフが撮った写真や、日々のちょっとした出来事も、発信の材料として使えるようになります。

もちろん、すべて同じ投稿にするという意味ではありません。考えるべきところに時間を使い、毎回考えなくていいところは仕組みにする。それだけで、発信できる人の数が変わります。

⑤最後に「見てもらうためのフック」を考える

ただし、軸を統一して発信しても、見てもらえなければ認知にはつながりません。

そこで必要になるのが「フック」です。

ユーザーの悩みから始める。ビフォーアフターを見せる。漫画でストーリーにする。実際のお客様の声を使う。意外な結果を最初に見せる。個人が登場して語る。

ここで大切なのは、フックだけを強くしないことです。

動画が1万回再生された。投稿にたくさん「いいね」がついた。それでも、

「ところで何の会社だった?」

では、認知活動として十分とは言えません。

フックは「見てもらうため」。 ブランドは「覚えてもらうため」。

両方をセットで考えます。

投稿代行ではなく「自社で発信できる状態」を作る

ここまで整理してみると、中小企業の発信支援に必要なのは、SNS投稿を何本作るかということだけではないと、私たちは考えています。

自社の強みや提供価値を整理する。誰に、何を伝えるのかを決める。そこからブランドの軸を作る。

その軸を、ホームページ、コラム、Instagram、Threads、YouTube、動画、Googleビジネスプロフィールへ展開していく。

さらに、トンマナ。デザインルール。ロゴ。テンプレート。AIへの渡し方。制作フロー。

私たちがやりたいのは「投稿を代わりに作り続けること」ではありません。自社の提供価値を、社内の誰もが、そしてAIも使える形に整えることです。

そこまで整えば、発信は外注し続けるものではなく、自社の中で回るものになります。必要に応じて制作は支援しますが、最終的には社内にノウハウが残る形を目指しています。

数字を見て、軸そのものを更新する

そして、仕組みを作って終わりではありません。

実際に発信したら、どのくらい見てもらえたのか。プロフィールを見てもらえたのか。会社名の検索は増えたのか。ホームページへの流入は変化したのか。問い合わせにつながったのか。

これを確認します。

私たちが現在、集客を見る上で基準にしているのが、

企画 → 露出 → 認知 → 行動 → 成約 → 売上

という流れです。

露出が増えないなら、発信量や媒体を見直す。露出は増えているのに認知されないなら、ブランドや内容を見直す。ホームページまでは来るのに問い合わせがないなら、Webサイトや導線を見直す。

数字は、投稿の良し悪しを採点するためのものではありません。どの言葉が届いていて、どの言葉が届いていないのかを知り、軸そのものを磨いていくためのものです。

50本書いて、改めて感じていること

このコラムも、今回で50本目になりました。

私たち自身、書きながら試行錯誤してきました。専門性を高めようと記事を書いても、思うように流入が増えなかった。Instagramを再開しても、以前と同じ方法では反応が得られなかった。AI Overviewによって検索行動そのものも変わってきた。

そのたびに「では、次に何を変えるべきか」を考えてきました。

今いちばん変わったと感じているのは、AIによって、発信にかかる時間が明確に減ったことです。

ただ、空いた時間で本数を増やすことが目的ではありません。

考えなくていいところをAIに任せて、空いた時間を「何を伝えるか」「誰に届けるか」を考えるほうへ戻す。効率化の目的は、量を増やすことではなく、軸を深めることのほうにあります。

これからの中小企業のWeb集客は、

ホームページだけ。SEOだけ。SNSだけ。AIだけ。

という一つの施策では考えにくくなっています。

自社の強みを決める。それを言葉にして社内とAIに渡す。さまざまな場所で繰り返す。数字を見て磨く。

この一連の流れを作れるかどうかが、これからの差になっていくのではないでしょうか。

最後に一つだけ。

もし今、AIに向かって「うちはこういう会社です」と説明しようとして、すぐに言葉が出てこなかったとしたら。

それは、お客様にも伝わっていないということです。

正直に書きますが、私たちもそうでした。ある方には「ホームページやSNSの相談を受けている会社です」。別の方には「中小企業のブランディングです」。また別の方には「集客のお手伝いです」。聞かれるたびに、答えが変わっていました。

決めていなかったからではありません。一つの文で、すべての相手に説明しようとしていたからです。

今も、相手によって説明を変えること自体はやめていません。Webにあまり関心のない方に「ブランディング」と言っても、伝わらないからです。

その代わり、どの言い方にも必ず同じ言葉を入れるようにしました。

中小企業の強みを、ホームページやSNSで伝えるお手伝いをしています。

中小企業の強みを集客につなげる、ブランディングの会社です。

中小企業の強みを、選ばれる理由に変える会社です。

文は違います。それでも、相手の頭に残るものは同じになります。

ブランドとは、こちらが言った文のことではなく、相手の中に残った中身のことです。そろえるべきだったのは、文のほうではありませんでした。

そして今、ホームページのトップにはこう書いています。

強みを、選ばれる理由へ。

次の投稿を考えるより先に、この一行にあたるものを決めてみてください。

それを発信することで、いつしかお客様の記憶にどんな時に利用すればいいのか記憶に積み重ねられて、ふとニーズが生まれたときに、「そういえば…」と思い出してもらえるようになります。

今日の1歩が明日の成果につながりますように。

− Profile −

Makiko Kato

有限会社ドリームワークス代表

企画を立案する面白さに取りつかれ地元女性むけのライフスタイルマガジンを20年間発行してきました。
一生懸命やりすぎて、Webマーケティングの波に乗り遅れ、そこからSEOやWeb解析を猛勉強。
現在は、中小企業の“本当の強み”を整理し、ホームページ・SNS・紙媒体まで一気通貫でサポート、ブランディングと集客改善を伴走しています。
「どんな会社にも、その会社らしい魅力がある」
その価値を伝わる形に整えることを大切にしています。

【資格】

・経済産業省 SEMサポーター
・AB3Cファシリテーター
・Web解析士
・SEOコンサルタント
・ブランドマネージャー2級
・NLPマスタープラクティショナー

中小企業の強みを整理しブランドと集客の仕組みを育てる。
社外マーケティングパートナー

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